道路脇で車に向かってこちらを見ている、あのちょっと懐かしい「飛び出し坊や」。
子どもの飛び出し注意を呼びかける存在として全国に広がりましたが、実はその発祥の地は滋賀県東近江市だとご存じでしょうか?
地元では「とび太くん」と呼ばれ、今やご当地キャラとして愛される存在に。この記事では、飛び出し坊やの歴史や誕生秘話、滋賀ならではの飛び出し文化をご紹介します。滋賀観光の豆知識にもなるので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも「飛び出し坊や」とは?役割と全国への広がり

飛び出し坊やは、子どもの飛び出し事故を防ぐために道路脇に立てられた安全啓発看板です。特徴的なデザインで、ドライバーの目を引きやすいのが大きな役割。
1970年代以降、全国の自治体や交通安全団体に広まり、今では地域ごとのアレンジ版も登場しています。忍者やアニメキャラ、動物モチーフなど、その土地ならではの「ご当地飛び出し坊や」が見られるのも面白いポイントです。
飛び出し坊や発祥は滋賀県東近江市にある久田工芸

飛び出し坊やである「とび太くん」は、滋賀県東近江市で誕生しました。昭和47年(1972年)頃に誕生したこの看板が、現在全国に広がる“飛び出し坊や文化”の始まりなのです。

製作したのは、東近江市にある看板業者「久田工芸」さん。社会福祉協議会からの依頼に応える形で作られました。一つ一つ丁寧に手作りされている飛び出し坊やである「とび太くん」。とび太くんは久田工芸以外では作られていません。
はまる55全国的にも有名なとび太くんの生まれ故郷です。


高齢の久田さんがとび太くんをひとつひとつ手作りでつくられていましたが、2025年に現地を訪れた際は、既に引退されて2代目が引き継がれてとび太くんの制作をされていました。外観はいたってシンプルな工房。
中の撮影はNGでしたが、2代目のご厚意で特別に工房を見学させていただきました。工房内では、ペンキを塗って乾かしている途中の「飛び出し坊や(とび太くん)」が、ペンキが付かないよう専用の木を間に挟んで丁寧に重ねられており、その光景がとても印象的でした。



2代目に色々お話も伺えました。
何度も重ね塗りをする過程で乾かすという作業がはいるので、飛び出しぼうやのとび太くんの制作は月に20体を作るのが精いっぱい。昔はオリジナルのとび太くんの制作も受付していましたが、通常の注文が多く入るので現在は受付していないそうです。
とび太くんは全国的にも有名になり、遠方から見学に来られる方が増えましたとのこと。工房の中は大きいとび太くん、小さいとび太くん。色が塗られたとび太くんと様々。


工房の片隅に、シールなどのとび太くんグッズを販売されていました。
久田工芸への行き方
八日市駅から2㎞あるのでバスを利用するのがおすすめです。ただし本数はあまりありません。
■バス;八日市駅から 近江バス 御園線 永源寺車庫行き 「村田製作所前(奥山)」停留所下車


| 店名 | 久田工芸 |
| 住所 | 滋賀県東近江市妙法寺町880−6 |
| 電話 | 0748-22-6222 |
| 定休日 | 日曜日 |
| 営業時間 | 8時~17時 |
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ご当地キャラ「とび太くん」と東近江の街並み


滋賀県東近江市では、飛び出し坊やは「とび太くん」という愛称で親しまれています。大きな目と赤い服、走り出すようなポーズが特徴的で、町のあちこちに設置されています。
さらに、ご当地キャラクター化され、グッズやイベントでも活躍。地元の観光PRや地域イベントにも登場するなど、交通安全の枠を超えて“街のシンボル”になっています。
東近江を歩けば、普通の看板では味わえないユーモアあふれる「とび太くん」に出会えるはずです。
1. 八日市駅周辺


近江鉄道「八日市駅」付近と「久田工芸」付近の「とび太くん」を探してみました。


東近江市観光案内




東近江市観光案内は八日市駅前にあり、観光に関するさまざまな情報を発信しています。ビルの1階に位置し、カフェも併設されているので、観光の合間にひと息つくのにもぴったりのスポットです。


入口にコーヒーの帽子をかぶったカフェの店員さんの飛び出し坊やのとび太くんがいました。
延命湯


八日市駅から5分ほど歩くとある町のお風呂屋さん「延命湯」。


延命湯の壁には、飛び出し坊や「とび太くん」のお風呂バージョンが描かれていました。青いタオルを巻き、腕にはロッカーの鍵まで付けた姿がなんともユーモラスです。
4. 久田工芸(製作元)付近


久田工芸の道路をはさんですぐの場所に「フランス料理 ぎんぎん」。店先にあるのはぎんぎんのオリジナルキャラクターのうさぎの飛び出し坊や。
久田工芸の方に一番近くにあるとび太くんのオリジナルバージョンとして紹介していただきました。
八日市とセット楽しみたい近江八幡エリア


滋賀県のほぼ中央に位置する近江八幡は、古くから商人の町として栄えたエリア。琵琶湖の東岸に広がり、今もなお水郷の景観や江戸時代の町並みが色濃く残る、風情あふれる歴史の街です。
町の中心には、豊臣秀次が築いた八幡山城の城下町が広がり、格子戸の町家や白壁の土蔵が並ぶ「新町通り」は、まるで時が止まったかのような美しさ。映画やドラマのロケ地としてもよく使われます。
また、「八幡堀(はちまんぼり)」と呼ばれる運河沿いの散策も人気で、春は桜、秋は紅葉と、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。船に乗って水路から町並みを眺める「八幡堀めぐり」もおすすめです。
さらに、近江商人の発祥地としても知られ、「三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)」の精神を今に伝える老舗や資料館が点在。近江牛や赤こんにゃく、バームクーヘンで有名な「クラブハリエ」など、食の楽しみも豊富です。
静けさと懐かしさに包まれた町並みの中で、ゆったりと時間を過ごせるのが、近江八幡の魅力です。


JR琵琶湖線駅である近江八幡駅。京都駅から近江八幡駅まで約40㎞です。電車を利用する場合、乗り換えなしなら所要時間は約40~50分。


近江八幡駅から八幡堀へは6番のりばからバスに乗ります。
近江八幡の珍しい飛び出しぼうや「とび太くん」
実は近江八幡の八幡掘りには、珍しい飛び出しぼうや「とび太くん」がたくさんあります。
八幡宮前


八幡宮前で昔ながらの学生服を着た「飛び出しぼうや・とび太くん」に出会えます。
なぜ学生服姿なのかというと、このすぐ前にある「白雲館(はくうんかん)」が理由。


白雲館は、明治10年代に建てられた旧・八幡東学校の校舎で、今も美しい擬洋風建築として保存されています。
その歴史を今に伝える場所にちなんで、とび太くんも学生服姿で町を見守っています。
レトロな校舎と、ちょっと懐かしい学生姿のとび太くん。
どちらも、近江八幡の“昔と今”がやさしく溶け合う風景をつくっています。
あゆの店 きむら


琵琶湖の名産あゆの甘露煮や佃煮などを取り扱うお店。あゆをもった飛び出しぼうやは三度笠をかぶっています。看板は外にはなく店内にありました。
お店の方に「なぜ外に出さないのですか?」と伺うと、木製の飛び出しぼうやが痛まないように店内に置いているそうです。


琵琶湖の名産・スジエビと大豆を甘く煮た「えび豆」。スジエビは殻ごと食べられるので、香ばしさと旨みがぎゅっと詰まっています。今回は、そのえび豆をお土産に購入しました。
千成亭


「味噌漬け献上品」と書かれた飛び出し坊や「とび太くん」を発見!
実は、将軍家・御三家にも献上されていたという“近江牛の味噌漬け”にちなんでいるんです。
味噌でじっくり熟成された旨みは、まさに近江の伝統の味。
このお店は2階では近江牛のお食事が、1階は食べ歩きができる近江牛のコロッケやサイコロステーキを販売しています。お店の前を歩くだけでいい匂いです。
近江兄弟社
メンタームでおなじみの「近江兄弟社」は、実はここ近江八幡が発祥の地。地元から全国へと広がった老舗メーカーで、今もなお地域に根ざした企業として親しまれています。


アメリカ人宣教師創立者ヴォーリズの“人を助けたい”という想いから生まれた会社で、今もその精神がこの町に息づいています。


実はここにも飛び出し坊やのとび太くん、近江兄弟社の資料館前にオリジナルがあります。平日のみの開館で今回は中に収納されており、見ることができませんでした。



近江兄弟社資料館前にあるとび太くんは、頭に羽をつけ、リップクリームを持っています。
和た与のとび松くん


「でっち羊羹」とういろで有名な和た与さん。その丁稚さんをイメージして作られたのが、飛び出し坊や。和た与さんの飛び出し坊やは名前があり「とび松」くんというそうです。


かつて近江商人に仕えていた丁稚さんが、帰省の際にお土産として持ち帰ったのが「でっち羊羹」。


お土産に「でっち羊羹」と「ういろ」を買って帰りました。


でっち羊羹は昔ながらの竹の皮で包まれています。
近江鉄道で行く 近江八幡から八日市


近江八幡から八日市へ向かう際に便利なのが、近江鉄道。沿線ののどかな風景を楽しみながら移動できます。
通称がちゃこん電車


近江鉄道は、滋賀県を中心に運行されるローカル鉄道で、地元の生活や観光に欠かせない交通手段です。
本社は近江八幡市にあり、東近江エリアと近江八幡、彦根方面を結ぶ路線網を持っています。
特徴のひとつは、のんびりとしたローカル感と風情ある車両。特に、車両が走る際に立てる「がちゃこん、がちゃこん」という独特の音は、沿線の風景と相まって、地元の人々や観光客に親しまれています。
近江八幡のコインロッカー
近江八幡駅のコインロッカーは合計3か所あります。
- 南出口連絡路:1か所
- 北出口バスロータリー付近:1か所
- 北出口・観光協会内:1か所(ただし17時に閉まるので注意)
今回、17時までに駅に戻れる自信がなかったため、一般のコインロッカーを利用しようとしましたが、スーツケースサイズのロッカーは圧倒的に数が少なく、使用できませんでした。
観光の際には、観光時間を考慮してコインロッカーを選ぶと、よりスムーズに観光を楽しめます。
近江八幡と八日市との距離


電車の場合は、近江鉄道線を利用して「近江八幡駅〜八日市駅」間が約25分ほど。ローカル線の車窓からは田園風景が広がり、のどかな滋賀らしい風景を楽しめます。ただし本数が1時間に2本程度なので予め確認しておきましょう。


近江鉄道はICカードは使用できません。


まとめ
全国で見かける「飛び出し坊や」ですが、その発祥の地は滋賀県東近江市です。
子どもの飛び出し事故を防ぐために誕生した「とび太くん」は、今では地元のシンボルとして親しまれ、ご当地キャラクターとしても知られています。
街のあちこちに点在するとび太くんを探しながら歩く、生活に溶け込んだ風景を楽しむ旅も魅力のひとつです。
近江八幡駅から八日市駅へは近江鉄道を利用しました。本数は多くありませんが、のんびり走るローカル電車ならではの郷愁あふれる風景や車両の雰囲気を楽しむことができます。











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